主に千葉県における刑事弁護など


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「共謀罪」があれば、共謀罪に問われたかも

本日の参考記事→<殺人依頼>32歳女を逮捕 警察に相談、犯行が発覚Excite エキサイト : 社会ニュース

 インターネット上の犯罪行為などを請け負う“闇サイト”で不倫相手の妻の殺害を依頼した(殺害は実行されず)という事件記事。
 警視庁が立件した罪名は、「集団的犯罪等の請託罪」。
 こんな犯罪あったんですね。
 実際に使用されるのはかなりまれではないかと思います。
 記事には、この犯罪は、暴力行為法上の犯罪とされていますが、この法律の正式名称は、
 「暴力行為等ニ関スル法律」。
 大正15年成立の古い法律で、刑法は現代語になりましたが、刑法の付属法であるこういう法律は、現代語にはならなかったんですね。まだ、漢字カナ交じりで法律がそのまま残っています。
 この法律、全部で3条しかないコンパクトな法律で、実務上で一番よく出てくるのは、示凶器脅迫罪といって、凶器を示して脅迫をするという犯罪類型。刑法の脅迫罪よりも、この犯罪類型のほうが法定刑が重いため、よく使用されます。
 今回の「集団的犯罪等の請託罪」は、第3条にあり、条文はやたらややこしいのですが、要は、
 ”数人共同して殺人罪等を犯す目的で申し込みや約束をしたり、金品を受け取った”
場合には、この犯罪が成立するというもの。
 法定刑は、記事にも書いてありますが、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金であり、法定刑としては低い部類に属します(例えば、故意に物を壊したら成立する器物損壊罪でも3年以下の懲役または30万円以下の罰金です)。

 ところで、こんなマイナーな法律ではなくて、殺人罪関係の条文を適用すればよいのではないか?と思われる方も多いのではないかと思います。
 まず、人が殺されていませんから、殺人既遂罪は当然使えません。
 では、殺人未遂罪は?
 未遂罪が成立するためには、実行犯が、殺人の”実行行為”をしていなければならないのです。実行行為というのは、被害者が殺されるような危険性に具体的にさらされた状態なのですが、今回のケースでは、被害者とされた方に危害が加えられていないということなので、実行行為はなされていないと警視庁は判断したのでしょう。
 未遂にも達していないとすれば、次は、殺人予備罪が適用できないか検討する番です。
 殺人予備というのは、「殺害の実行の着手にいたる以前の準備行為一般」と言われていますが、すべての準備行為ではなく、「客観的に殺人の危険性が顕在化する場合」である必要があります(引用は、前田雅英:刑法各論講義第3版より)。
 今回のケースでは、準備をした形跡が見られますが、殺人の危険性が顕在化したというには、とりあえず現段階の証拠では難しいのでは・・・と考えたのでしょう。
 ということで、殺人罪関連の条文の適用は見送り、現段階の証拠状況でもっとも確実な、「集団的犯罪等の請託罪」を選んだのでしょう。
 もっとも、今後の捜査による証拠収集で危険性が顕在化したというものが集まれば、殺人予備に切り替えることは見据えてのことでしょうが。
 前回の国会には、共謀罪法案というのが提出されました。
 民主党などの反対で、結局成立はしませんでしが、この法律ができていれば、今回のケースでは共謀罪に問われるかもしれません。
 ただ、この共謀罪というもの、言論の自由を萎縮させる効果がありますので、法律には賛成しかねるというのが、私の周りでの評判です。
 実際、本件のようなケースでも、適用できる法律があるわけですから、共謀罪などなくても犯罪としての立件には困らないということを示していると思います。
  
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by cuts | 2005-09-15 07:02 | 刑事弁護